服を作る上で、重要な要素の一つとして「ゆとり」がある。

ゆとりとは簡単に言うと差寸なのだが、服は身体というカーブに生地が層(表地・芯・裏地)になって構成されているので、箇所によって生地の差寸を設けないと身体にきれいに沿った服が出来ない。

またそれぞれの布地の縮率も異なるのでその辺りも加味してゆとりを入れる必要がある。

ゆとり量は生地によって様々なので数値化できるものではないのだが、上襟(地襟・上襟表地)に関してはほぼ数値で入れている。

これも作りながら手の感覚だけでゆとりを入れている方も多いが、僕は以前の職場でも数値で教わったし、他の職人の方に習った際も数値で入れていた。

というのも、首周りはカーブが急なので上衣の首周りに自然に沿わせる分量だけだとゆとりが足りず、綺麗に首に沿わなかったり着ていくうちに上襟が引き攣れていくことがある。フロントの落ちも不十分な気がする。

なので首周り分量より明らかに多い分量を入れ込む必要があるので上襟のゆとりは自然な分量ではなく数値を目安にしている。

首のどの部分にゆとりを入れるかは割愛するが、僕の場合は地襟は全体で16mm、上襟はその上に被せるので更に全体で18mm(上襟表地に関しては生地によるのでこれは普通のウール地での話)ほどのゆとりを入れる。

そう考えると上衣の首回り寸に対して一番上にかぶさる上襟表地は34mmも長いことになる。

この分量はアイロンプレスでゆっくり入れ込まなければ処理しきれない分量なので、なかなか既製の工程では難しいだろう。

ただ、そうやってじっくりプレスで入れ込むことによってストレスなく首に沿い、時間が経っても変に引き攣れない柔らかな上襟が付くのである。

ちなみにある職人の方は”地襟”全体で40mm~50mmのゆとりを入れていた。この寸法はなかなかすごい数値だが、時間をかけてじっくりアイロンプレスすることで入れ込むことができるのだ。

上襟に限らずだがゆとり量というのは考え方や理論、作業工程など色々な要素で作り手によって本当に様々なので正解というのはない。(襟にはネカシ量などもあるので引き攣れうんぬんなどの要因は実際にはもうちょっと複雑である。)

一つ言えるのは感覚もしくは数値というのは後からのものであって作り手の「上襟をどのような雰囲気、形にしたいか」の理想がありそれに則した結果がゆとりの分量になるということだ。

なので僕の考えるゆとり量も今後変化を繰り返していくとは思うが、その変化もものづくりの面白さである。

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