シングルギア

自転車が好きである。

富山に来て普段の足として某フリマサイトで格安の自転車を買った。

多段ギアの無いシングルギアの自転車、所謂ピストバイクというやつだ。(ピストが流行った15年程前以降情報を入れていなかったので、今はピストというよりトラックバイクやフィックスドギア、シングルギアという言い方の方が多いようだ)

以前から機会があれば乗りたいとぼんやり思っていたが、生活の足として自転車が必要になったことと多少運動もしなければという理由で試しに買ってみた。

初めてピストバイクというものに乗ったがこれがなかなか面白い。

ギアが前後1枚づつしか無いという潔さと、後輪のギアが固定されているのでペダルを前に漕げば前に進み後ろに漕げば後ろに進むという構造は初めての感覚だった。(慣れるまでは怖かったが)

よくピストに乗っている人が言う「自転車と一体になる感覚」というのもわかる気がする。

また、そのシンプルな構造ゆえ自分自身でパーツを色々カスタムできるというのも魅力の一つだ。

そんなこんなでピストの魅力にすっかりハマってしまい色々と調べていくうちに、自転車にはジオメトリというものがありそれが自転車に乗る上で凄く重要な要素であるという事が分かった。

ジオメトリとは自転車のフレームを構成するパイプの長さや角度の数値のことで、乗り手の体型や乗り方によって最適なジオメトリも変わるのである。

ロードバイクとピストバイクでは同じ自転車でも競技が違うので乗り方(長距離なのか短距離なのか等)も勿論違い、それぞれに合ったジオメトリというものが存在する。

これの行き着く先がオーダーフレームという事になるのだが、僕がハマった理由が恐らくここにある。

そう、仕立て服と似ているのだ。

ジオメトリとは洋服でいう型紙なのである。

角度や数値が変われば乗り味が変わる自転車と着心地が変わる洋服。

なんだか親和性が高い気がする。

もっと無理やり言うと自転車の本場もイタリアである。

日本の競輪フレームのビルダーの方もイタリアの有名工房で修行していた方がいたりして、この辺りも我々の界隈と似ている。

共通点が多い事を言い訳にハマっている事を正当化しているだけなのだが、それでも洋服を仕立てる上でのヒントが多少なりともあるから面白いものである。

また、タイヤにも種類があるという事もハマってから知った。

一般的なタイヤは中にチューブが入っているもので、パンクした際にタイヤの中からチューブを引っ張り出して修理する。自転車屋さんのパンク修理でよく見る光景だ。

このタイヤの事をクリンチャーというのだが実はタイヤにもクラシックなものがあり、それがチューブラーというものだ。

チューブラーというのはタイヤとチューブが縫い合わされ一体化しているもので、ホイールには接着剤もしくは専用の両面テープで貼り付ける構造だ。

タイヤの歴史で言えばこのチューブラーの方がクラシックであり、クリンチャーはその後出来た構造である。

チューブラーのメリットは真円度が非常に高いところだ。真円に近いと乗り味がしなやかになり転がり抵抗も少ない。競技などでは未だにチューブラーは多く使われているようである。

ただ、デメリットはパンクをした際にタイヤを丸ごと交換するはめになる。一か所だけの傷などでパンクしたとしても丸ごと交換だ。(修理が出来ない訳ではないが、縫い合わせたりなど非常にめんどくさいらしい)

クリンチャーのパンクは中のチューブが原因であることがほとんどなので修理も容易、そして外側のタイヤはそのまま使える事が多く経済的でもある。

それでもチューブラーに惹かれるのは不便だが余りある性能上の優位性があるからだろう。

この辺りも仕立て服と似ている気がする。

手間がかかり現代では不便とされるような構造や作りでも、その構造が理にかなっていてそれでなければ得られない特性は仕立て服にもいえる事だと思う。

とまぁ半ば無理やり自身の職業とあたかも共通しているかのような事をあげつらってきたが、言い訳をしてしまう程自転車には謎の魅力がある。

きっとすぐに乗れて一番身近な乗り物であることと、性能の良し悪しがダイレクトに感じられるからだろう。

今はもっぱらピストバイクの最高峰であるNJS、所謂競輪フレームというものに憑りつかれている。

ゆくゆくは有名ビルダーさんの所で自身の自転車をオーダーしたいと思っているが、それはまだ当分先の話だ。

愛車。

ちなみに富山はナショナルサイクルルートのある県なのでサイクリングは結構盛んである。

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